
日韓併合を翌年に控えたソウル。文房具店を営む篠崎家の午後のひととき。
この日、長女の文通相手が訪ねてくることになっていたが、なかなか現れない。そんな時、篠崎家の書生と旧知の仲である手品師が訪れるのだが・・・。
平田オリザおよび青年団の初期の代表作と呼ばれるソウル市民をはじめ、新作2作品を含む「ソウル市民5部作」を連続上演してしまう公演。この日は「ソウル市民」「ソウル市民1919」そして「ソウル市民 昭和望郷編」のソウル市民3部作が上演されました。
オイラは事情があってこのソウル市民しか観なかったんですが、暴風雨で外を歩くのに不適な日だったこともあり、1919は観れば良かったと少々後悔しております。
さて、この作品はソウルに住む上流階級っぽい日本人家族を描いており、当時の「悪意なき市民たちの罪」にスポットを当てているそうなんですが、あまりピンときませんでした。当時の日本人が朝鮮人を蔑視していたらしいことは知っていましたが、ここに出てくる日本人たちはそのような素振りを見せたりしないですからね。
ただ、あからさまな言動ではなくても無意識もしくは善意による「上から目線」を描いているんだと気づくことができました。立場の違う人たちが同じ食卓に座ることについて、一方が「座らせてやっている」と思っていたら・・・ってことですね。
まぁそれらをすべて「悪」だと断じてしまったら、ちょっと厳しすぎるような気もしますが・・・。
ラストは長男が朝鮮人の女中と示し合わせての駆け落ち。長男の家出はこれまでにも何度も繰り返されているらしく、緊迫感のない家族たちが面白かったです。
それに行方不明となったままの手品師はどうなったのか、興味津々のうちに終演。そして舞台上にいた人だけによる静かなカーテンコール。
あぁ青年団の舞台だなぁ・・・って一人納得です。
それにしても、この篠崎家を訪ねてくる人、さっき訪ねてきたひと、訪ねてくるはずだった人、そして、訪ねてきて姿を消した人・・・一つの場でいろんな登場人物を見せることができるんですね。そもそも開演時にはその後まったく登場しない大工さん一人だったわけだし・・・。
